四十八踏み目 和多都美(わたつみ)神社
| 和多都美神社
●所在地
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さざ波と月光の社
対馬に出かけるときに、絶対外してはいけないと心に誓ったのがこの和多都美神社である。世界遺産にもなった厳島神社の海の中にある鳥居。その原型ともいわれるのがこのお社という。
初日の取材が終わり、もうとっぷり日は暮れた。見上げると、あと2日で満ちる月の光は存外に強かった。おお、これならば。
ボクはレンタカーに乗り込み、地図を片手に厳原のホテルを出発した。
対馬は、山国である。幹線道路を走らせていると、ほとんど海は見えない。
山の上のといっても、比較的緩やかな傾斜のところに背骨のように道路が走っている。時々、分岐があり、脇道にそれていくとその先に平野があり集落がある。車道が本格的に整備さされたのは戦後であるというから、集落を結ぶのはずっと海の道であった。隆起した裾に各集落があるのではなく、感覚的には各集落が山を背負っているという方が正しいかもしれない。
和多都美神社は浅茅湾というリアス式海岸の奥中の、鏡のように穏やかな入り江のほとりにある。海中に一の鳥居、二の鳥居。浜門ともいうべき岸壁に三の鳥居。
入り江を滑りながら、神域に入る。カメに乗った浦島太郎ではないが、スーッと導かれるような感覚だったろうな、と思った。
というのは翌日の昼に訪れた時の感想だ。
夜の海神の誓紙は、海も山も黒く濃く。月光は強く、幾条もの光線がはっきりと注いでいるのが分かった。
月光は建物や木々にあたるとこぼれ、淡い陰影をつくった。人の眼にははっきり浮かび上がる神秘な光景は、デジカメのCCDが感知するにはあまりにも微弱で、本格的にセッティングすれば撮影はできたかもしれないが、それよりもボクの網膜に焼き付ける方が鮮烈だと判断して、カメラをいぢるのをやめた。月をバックに社の裏に小山のシルエットが浮かんでいた。
「あそこはいい神社ですが、夜行っちゃダメですよ」
「知り合いが夕方ウォーキングしていて妙な声を聞いたらしいですよ」。
ボクが夜、この地を訪れるつもりだというと地元の人が妙に脅してくれた。
自販機と公衆電話ぐらいしか光っていない神社を見ると、確かに夜間参詣する人を想定していないことが分かる。
だがボクはそんな恐ろしい気配を感じることなく、30分ほど三の鳥居の下、海風のほどよい冷たさを楽しんだ。波の音すら感じないほど、静かだった。
予習もしていなかったボクは、暗闇に眼が最後まで慣れず、この神社の真髄ともいえる大切なところに気づかずに立ち去ってしまった。










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